漢文句法

④否定・禁止(不可能)

漢字 読み
不能 あたハず
―できない
不得 ―ヲ
不可 ―べカラず
不忍 ―ニしのビず ・―に耐えられない
・―できない
不勝
(不堪・不任)
―ニヘず
不足 ―ニラず ・―する価値が無い、―に値しない
・―できない、―に十分でない
不可勝 ゲテ―べカラず
―ニフベカラず
・―しきれないほど多い

※以下、原文中の は置き字
且欲与常馬等、不可。《韓愈・雑説》
且つ常馬と等しからんと欲するも、得べからず
せめて普通の馬と同じ位の力を出そうとしても、実現することができない
医至曰、「疾不可為也。《病入膏肓》
医至りて曰はく、「疾為むべからざるなり
医者が到着して言うには、「病気は治すことができない
巻土重来未可《杜牧・題烏江亭》
巻土重来 未だ知るべからず
一度破れた者が再び盛り返すかどうか、まだ分からない
躊躇不能《白居易・長恨歌》
躊躇して去る能はず
ためらい足が止まって、去ることができない
懿笑曰、「吾能料生、不能死。」《十八史略・死諸葛走生仲達》
懿笑ひて曰はく、「吾能く生を料るも、死を料る能はず」と。
司馬懿が笑って言うには、「私は生きている人間のすることは推測できるが、死んだ人間のすることは推測できない。」と。
其人弗能応也。《韓非子・矛盾》
其の人応ふる能はざるなり
その人は答えることができなかった
轍年少、未能通習吏事。《上枢密韓太尉書》
轍年少くして、未だ吏事に通習する能はず
わたくし蘇轍は年が若く、まだ役人の仕事に習熟できていない
不得。《史記・鴻門之会》
撃つを得ず
項荘は沛公を襲うことができなかった
不得休息。《史記》
休息するを得ず
兵士たちは休息することができなかった
項王自度不得、謂其騎曰、《史記・項王自刎》
項王自ら脱するを得ざるを度り、其騎に謂ひて曰はく、
項王は、もはや脱出できないと自らさとり、配下の騎兵に話しかけて言うには、
彼前不得、退不得、《十八史略》
彼前みては闘ふを得ず、退きては還るを得ず
敵軍は(きっと立ち往生して、)前進しても戦うことができず、退却しても帰還することはできず
未得。《史記》
未だ殺すを得ず
斑は犖をまだ殺すことができない
信使決水。且軍大半不得。《十八史略》
信水を決せしむ。且の軍大半渡るを得ず
韓信は川の水を決壊させた。そのため龍且の軍は大半が川を渡ることができなかった
君長者、不忍刺君。《史記》
君は長者なり、君を刺すに忍びず
あなたは有徳の人だ、だからあなたを刺すことはできない
遂飲薬死。曰「吾不忍禍及吾身。」《史記》
遂に薬を飲み死す。曰はく「吾禍の吾が身に及ぶを見るに忍びず。」と。
とうとう父親は毒薬を飲み死んだ。最期に言ったのは、「私は、このまま災いが自分にふりかかるのを見ることに耐えられない。」と。
曾晳嗜羊棗。而曾子不忍食羊棗。《孟子》
曾晳羊棗を嗜む。而して曾子羊棗を食ふに忍びず
曾晳はなつめの実が好物だった。そういうわけで(曾晳の死後)、子の曾子はなつめの実を食べることができなかった
不忍殺之、以賜公。」《史記・項王自刎》
之を殺すに忍びず、以て公に賜はん。」と。
この馬を殺すことができず、よってこいつをあなたにやろう。」と。
叡泣曰、「陛下已殺其母。臣不忍殺其子。」《十八史略》
叡泣きて曰はく、「陛下已に其の母を殺す。臣其の子を殺すに忍びず。」と。
叡が泣いて言うには、「陛下はすでに母鹿を殺された。私はその子を殺すことができない。」と。
張良謝曰「沛公不勝桮杓、不能。《史記・鴻門之会》
張良謝して曰はく「沛公桮杓に勝へず、辞する能はず
張良がおわびして言うには、「主の沛公はこれ以上酒を飲むことができず、お別れの挨拶ができない
罷軟不勝、惰漫不親事、免官。《十八史略》
罷軟にして任に勝へず、惰漫にして事を親らせざるは、官を免ず。
体が弱くて任務に耐えられない者、怠けて自分で執務しない者については、免職とした。
孤極知燕小不足以報。《十八史略・先従隗始》
孤極めて燕の小にして以て報ずるに足らざるを知る。
私は、我が燕国が小国で、報復することができないのをよく分かっている。
今呉楚反。於公何如。」対曰、「不足憂也。今破。」《史記》
今呉楚反す。公に於いて何如。」と。対へて曰はく、「憂ふるに足らざるなり。今破れん。」と。
今、呉と楚の国が反乱を起こしている。お前の考えはどうか。」と。袁盎が答えて言うには、「心配するに値しません。反乱軍はすぐに負けるでしょう。」と。
「吾視郭解、状貌不及中人、言語不足採者。《史記》
吾郭解を視るに、状貌中人に及ばず、言語採るに足らざる者なり。
「私が郭解を見るところ、容姿は凡人にも及ばず、話す言葉は注目するに値しない
剣一人敵。不足。《史記》
剣は一人の敵のみ。学ぶに足らず
(項羽が言うには)剣術は一人の敵しか相手にできない。そんなものは学ぶ価値が無い
「唉、豎子不足与謀。《史記・鴻門之会》
「唉、豎子与に謀るに足らず
(范増が怒って言うには)「ああ、この小僧は一緒に大事をたくらむことはできない
此中人語云「不足為外人道也。」《陶淵明・桃花源記》
此の中の人語げて云ふ「外人の為に道ふに足らざるなり。」と。
この村の人が語って言うには、「村の外の人に話す価値は無い。」と。
晋主既再勝、意契丹不足。《十八史略》
晋主既に再び勝ち、意へらく契丹畏るるに足らずと。
晋の国主は既に二度戦いに勝ち、契丹(異民族名)は恐れるに値しないと考えた。
玄齢曰、「余人不足。如晦王佐才。《十八史略》
玄齢曰はく、「余人は惜しむに足らず。如晦は王佐の才なり。
玄齢が言うには、「他の人間は惜しむ価値はありません。しかし如晦は、王を補佐することのできる人材です。
如臣之比車載斗量不可勝。」《十八史略》
臣の比のごときは車載斗量するも勝げて数ふべからず。」と。
(呉の国には)私程度の人間なら、車に載せ、マスに入れて計っても、数えきれないほど多い。」と。
遇禍災者、不可勝。《史記》
禍災に遇ふ者、勝げて数ふべからず
思いがけぬ災難にあった者は、数えきれないほど多い
不可勝用。《孟子》
財勝げて用ふべからず
財産は使いきれないほど多い
誅之、則不可勝。《孟子》
之を誅せんとせば、則勝げて誅すべからず
この者達を罪を責めて殺そうとするならば、殺しきれない程多い
不違農時、穀不可勝食也。数罟不入洿池、魚鼈不可勝食也。斧斤以時入山林、材木不可勝用也。《孟子》
農時を違へずんば、穀勝げて食ふべからざるなり。数罟洿池に入らずんば、魚鼈勝げて食ふべからざるなり。斧斤時を以て山林に入らば、材木勝げて用ふべからざるなり
民衆を賦役に重用するに当たり農作業の時期を適切に考慮するならば、収穫する穀物は食べきれない程多い。目の細かい網を池に入れて全て取り尽くそうとしないならば、魚類は食べきれないほど多い。斧を持って、適切な時期だけ山に入るならば、材木は使いきれない程多い