古典文法・助動詞③
たり、り
文法的意味
◎「完了」の用例
頚もちぎるばかりに引きたるに、耳鼻欠け穿げながら抜けにけり。《徒然》
頭にかぶっていたかなえを首もちぎれるほどに引っ張ったところ、耳も鼻も欠けもげながらかなえが抜けた。
「天竺に二つと無き鉢を、百千万里の程行きたりとも、いかでか取るべき。」《竹取》
「天竺にも二つと無い鉢を、百千万里の距離を例え行ったとしても、どうやって手に入れることが出来ようか、いやできまい。」
人数を知らんとて、四五両月を数へたりければ、(中略)総て四万二千三百余りなんありける。《方丈》
(飢饉で亡くなった)人数を知ろうと思って、四月五月の二ヶ月間数えたところ、全部で四万二千三百余りであった。
五十の春を迎えて、家を出で世を背けり。《方丈》
五十歳の春になって、家を出て出家した。
其の時 自ら事の便り有りて、津の国の今の京に至れり。《方丈》
その頃、たまたまある機会があって、摂津の国の今の都(福原京)に行った。
綱絶ゆる即ちに、八島の鼎の上に仰け様に落ち給へり。《竹取》
綱が切れるやいなや、中納言は八島の鼎の上に落ちなさった。
◎「存続」の用例
常よりも物思ひたる様なり。《竹取》
(かぐや姫は)いつもよりも、思い悩んでいる様子である。
怪しがりて寄りて見るに、筒の中 光りたり。《竹取》
不思議に思って近寄って見てみると、竹の筒の中が光っている。
道の辺を見れば、車に乗るべきは馬に乗り、衣冠布衣なるべきは多く直垂を着たり。《方丈》
道のあたりを見ると、牛車に乗るはずの高貴な人が馬に乗っており、本来衣冠と布衣を着る身分の人が直垂を着ている。
船子楫取りは船唄歌ひて何とも思へらず。《土佐》
船員と船頭はのんきに船唄を歌って、何とも思っていない。
道知れる人も無くて、惑ひ行きけり。《伊勢》
道を知っている人もいなくて、迷いながら行った。
しつべき人も混じれれど、《土佐》
返歌をすることのできる人も混じっていたけれども、(誰もしなかった)。