格助詞〔が・の〕

用法 意味
主格 ~が
連体修飾格 ~の
準体格(体言の代用) ~のもの
同格 ~で
比喩
※「の」のみ
~のように・ような

※以下、原文中の は置き字

主格

吾妹子わぎもこゑし梅のごとこころむせつつなみだながる《万葉》

(今は亡き)妻が植えた梅の木を見るたびに、妻を想って私の胸は一杯になり、涙が流れることだよ。

すずめいぬがしつる。《源氏》

雀の子を、犬君が逃がしてしまった

藁筋わらすぢ 一筋ひとすぢぬのむらりぬること、とおもひて、《宇治拾遺》

一本の藁が布三匹になったことだよ、と思って、

盗人ぬすびとやつしやうみかけてにけりいましばらましかばかならからめてまし。《今昔》

泥棒のやつが障子を踏みつけて逃げた。やつがもうしばらくここにいたならば、必ず捕まえてやったのに。

いまあかかりければしやうもんしたかくれててりけるに、《今昔》

日がまだ明るかったので、羅城門の下に隠れて立っていたところ

からすいけかへるりければ、《徒然》

烏が集っていて、池の蛙を取って食べたそうなので

うたひとはく、 かきのもとのひと麿まろなり。《古今》

この和歌は、ある人が言うことには、柿本人麻呂のものである。

うたひとはく、大伴おほともくろぬしなり。《古今》

この和歌は、ある人が言うには、大伴黒主のものである。

なればでうだいごんのはめでたく、かねひさしかるべきぞ。《宇治拾遺》

どうして四条大納言のもの(和歌)はすばらしく、兼久のものは悪い、ということになるのだろうか。

くに博士はかせどものけるものも、いにしへはあはれなることおほかり。《徒然》

わが国の学者が書いたものも、昔のものは趣き深い物が多い。

くさはな撫子なでしこからはさらなり。大和やまともいとめでたし。《枕草子》

草花は撫子がよい。中国のものは言うまでもない。日本のものもたいそうすばらしい。

なればでうだいごんはめでたく、かねひさがはしかるべきぞ。《宇治拾遺》

どうして四条大納言のものはすばらしく、兼久のもの(和歌)は悪い、ということになるのだろうか。

二千人の人を竹取たけとりいへつかはす。《竹取》

二千人を竹取の家に派遣する。

きみためはるでてわかころもゆきりつつ《古今・春》

あなたのために、春の野に出て若菜を摘んでいる私の着物の袖に、雪が降り続けているよ。

くるまにてまたかへらば、われいのちりなんや。《今昔》

この牛車でまた帰るならば、(きつい車酔いのせいで)我らの命はあるだろうか、いやきっと無くなるだろう。

みやこひとは、ことけのみくて、まことし。」とひしを、《徒然》

都の人は、承諾の返事ばかりが良くて、それを守る誠実さに欠ける。」と言ったところ

いづれのおほんときにか、にようかうあまたさぶらたまひけるなかに、いとごときはにはあらぬすぐれてときめきたまありけり。《源氏》

どの帝の治世であったか、女御や更衣たちが大勢お仕えなさっていたなかに、 それほど貴い身分では無い人で、非常に帝の寵愛を受けなさる方がいた。

しろとりはしあしあかき、しぎの大きさなるみづうへあそびつついをふ。《伊勢》

白い鳥で、くちばしと脚が赤く、シギの大きさであるものが、水の上で泳ぎまわりながら魚を食べている。

あふぎどもをかしきを、ころひとびとたり。《紫式部日記》

扇などで風情があるものを、其の頃人々は持っていた。

あらえびすおそろしげなるが、かたひて「御子はおはすや。」とひしに《徒然》

ある荒々しい東国武士で、恐ろしい様子である人が、そばにいる人に向かって「お子さんはいらっしゃるのか。」と尋ねたところ

ゆめに、いときよげなるそうなる袈裟けさたるて、「きやうまきならへ。」とふとれど、《更級》

夢の中で、とても美しい僧で、黄色い生地の袈裟を着ている人がやって来て、「法華経の五巻を早く習いなさい。」と言うように夢を見たけれども、

れもいまむかし田舎ゐなかちご比叡ひえやまのぼりたりけるが、さくらのめでたくきたりけるにかぜはげしくきけるをて、《宇治拾遺》

これも今となっては昔の話だが、田舎の稚児で比叡山に登った者がいたが、桜が見事に咲いているところに風が激しく吹きつけたのを見て、

おほきなるをのこおそろしげなるが、だいかたなさかりて《宇治拾遺》

大きな男で恐ろしい様子の者が、大きな刀を逆手に持って

はやみ岩にかるる滝川たきがはわれてもすゑにあはむとぞおもふ《詞花・恋》

流れが速いので、岩にせきとめられて別れてもまた一つの流れになる滝川のように、二人も今は別れてしまうけれど将来はきっと一緒になろうと思うよ。

あしひきやまどりのしだりながながひとかもむ《拾遺・恋》

山鳥の垂れ下がった尾のように長い長いこの秋の夜を、私は一人寂しく寝るのだろうか。

春日かすがゆきけてでくるくさはつかにえしきみはも《古今・恋》

春日野で、雪の間から芽を出す草のように、わずかに姿が見えたあなただなあ。

そでしほえぬおきいしひとこそらねかはし《千載・恋》

私の衣服の袖は涙に濡れていて、潮が引いても海中から姿が見えない沖の石のように、人は知らないけれども乾く暇も無いことだよ。

さきにもおほんちぎりやふかかりけむ、きよらなるたまをのこ皇子みこさへまれたまひぬ。《源氏》

前世からの因縁が深かったのであろうか、この世に無いほど美しい宝石のような男の皇子までもお生まれになった。

とせぐすとも、ひとゆめこここそせめ。《徒然》

たとえ千年を過ごすとしても、一夜の夢のような気持ちがするだろう。